筏(いかだ)君(16)
人間高校野球部補欠。
「鼻而でちゃったよー」
「字が違うよ筏君」
「あっ、メンゴメンゴ。愉快痛快だね」
「筏君…」
そんな会話もようやく聞こえてくるようになったきた四月の朝。ここ人間高校では今年も恒例の全校入学式大会が開かれようとしていた。そして前年度チャンピンの筏君は今日も朝から大遅刻。担任からお仕置きのハイ・キックを延髄に受け片膝をつく筏君。
「訴えてやる…」
毎朝繰り広げられる光景に、クラスメイトは皆一様に冷たい視線を投げかけていた。そんな中、独り寂しく席に着く筏君。そしてまた、一日が始まろうとしていた。
昼。
ぱくりんこむしゃりんこごくりんこ。あーうま。
「今年はレギュラーとれるかなー?」
「てゆうかお前一度でも朝練出たことあるのか?」
「失礼なヤツだなマコトくん。部活動もやってない君に言われたくはない」
「出たことあるのか?」
「僕はこれから塾なので帰ります」
昼からかい。
…と突っ込みたい気持ちを抑えつつ、教室からそそくさと出てゆく筏君の後ろ姿を見送るマコト君なのだった。